
グリストラップのつまりを放置すると営業停止になる|水道業者が教える原因・直し方・予防法のすべて
水のトラブル
更新日 : 2026年06月05日

富士水道センター編集部
グリストラップのつまりは、飲食店にとって営業存続に関わる深刻なトラブルです。
悪臭・害虫・水あふれ・最悪の場合は営業停止処分にまで発展します。
本記事では、水道業者の視点からつまりの原因・正しい直し方・ワイヤーや洗剤を使った対処法・業者への依頼目安まで、専門的かつ実践的に解説します。ト
目次
グリストラップとは何か|なぜ飲食店に必要なのか

グリストラップのつまりを正しく理解するためには、まずこの設備が何のために存在するのかを把握しておく必要があります。
一般家庭のキッチンには排水管のみが設置されていますが、飲食店の厨房はその間にグリストラップが介在しているのが一般的です。
この違いが、飲食店における排水管理の根幹を成しています。
グリストラップの役割と設置義務
グリストラップの基本的な役割は、「厨房から出る排水に含まれる油脂分・食材カス・異物を分離し、水だけを下水道に流す」ことです。
飲食店では一般家庭とは比べ物にならない量の調理が日常的に行われており、排水に含まれる油脂の量も圧倒的に多くなります。
こうした排水をそのまま下水道に流してしまうと、排水管の詰まりを引き起こすだけでなく、環境汚染にも直結します。
グリストラップの設置は「建築基準法」「下水道法」「水質汚濁防止法」に関連しており、自治体によっては飲食店への設置を事実上義務付けているケースも多いです。
飲食店を新規開業する際には、必ず地域の条例を確認するようにしてください。
グリストラップの3槽構造と仕組み
グリストラップの内部は、基本的に3槽に分かれた構造になっています。
それぞれの槽が連携することで、排水から異物を段階的に取り除いていきます。
| 槽 | 役割 | 主な部品 |
|---|---|---|
| 第1槽 | 食材カス・生ゴミなどの固形物を除去する | バスケット(受けカゴ) |
| 第2槽 | 油脂分と水分を比重差で分離する | 仕切り板 |
| 第3槽 | さらに油脂分を分離し、きれいな水を下水へ流す | トラップ管 |
この3槽の仕組みが正常に機能していれば、下水道に流れる水はほぼ無害です。
しかし清掃を怠ると、各槽に汚れが蓄積し、グリストラップのつまりが発生します。
グリストラップには設置タイプによって「屋内埋設型」「屋内床置型」「屋外埋設型」の3種類があり、清掃のしやすさや排水処理能力がそれぞれ異なります。
特に屋外埋設型は深さがあるため清掃が難しく、業者への依頼が現実的です。
グリストラップのつまりが起こる原因|3つのメカニズムを解説

グリストラップのつまりには、大きく分けて3つの原因があります。
それぞれの原因を正しく理解しておくことで、予防策も具体的に立てやすくなります。
水道業者として現場で数多くのケースを見てきた経験から言えるのは、「複数の原因が重なって発生するケースがほとんど」ということです。
原因①|油脂の固着による排水管のつまり
グリストラップのつまりの原因として最も多いのが、油脂の固着です。
調理によって発生した油脂分を含む排水は、グリストラップ内で水面に浮上します。
この浮上した油脂分が気化すると、排水管の管壁の上部、つまり排水と接していない部分に徐々に堆積していきます。
最初は薄い膜のような状態ですが、時間が経過するにつれて半固形物から固形物へと変化し、最終的には固めのチーズのような塊になります。
この固形化した油汚れが排水管の通路を狭め、やがてつまりを引き起こします。
厄介なのは、古い油脂は非常に硬く固まっており、表面の新しい汚れだけが清掃で落ちても、内側の古い固着油脂はびくともしないことです。
動物性の油脂は植物性に比べて固まりやすいため、焼き肉店や揚げ物を多く扱う飲食店では特に注意が必要です。
原因②|生ゴミ・食材カスの蓄積によるつまり
第1槽のバスケットは、ご飯粒ほどのサイズの固形物を受け止めるように設計されています。
しかしバスケットの清掃を怠ると、ゴミが目詰まりして水の流れが著しく悪くなります。
さらにバスケットに引っかからなかった細かい食材カスは、槽の底に沈殿していきます。
この沈殿物が蓄積するとヘドロ状の汚泥となり、悪臭の原因にもなります。
放置すれば油脂と混じり合ってさらに固形化が進み、グリストラップ全体のつまりへと発展します。
バスケットの清掃は毎日が基本です。
「少しくらい大丈夫」という油断が、重大なつまりの引き金になります。
原因③|異物混入による急激なつまり
飲食店の厨房では、おしぼり・割り箸・破損した調理器具の部品といった異物が、気づかないうちに排水に流れ込むことがあります。
異物によるつまりは、油脂の固着と違って時間をかけて進行するのではなく、短期間で突然発生するのが特徴です。
異物が3槽構造のグリストラップをすべて通過することはまれですが、下水道まで届いてつまりを起こすと、復旧に多大な時間と費用がかかります。
スタッフ教育の徹底と、定期的なグリストラップ内の目視確認が有効な対策です。
「どうせ流れていく」という認識は厳禁です。
グリストラップがつまると何が起こるか|放置が招く4つのリスク

グリストラップのつまりを放置したとき、何が起きるのかを具体的に把握しておくことは非常に重要です。
現場での経験上、多くの店舗がつまりを軽視して手遅れになるケースを目にしてきました。
リスク①|悪臭の発生と客席への拡散
グリストラップに蓄積した油脂・食材カス・汚泥は、時間とともに腐敗します。
これが強烈な悪臭を発生させ、厨房内に充満します。
厨房だけであればスタッフが我慢できるかもしれませんが、悪臭が客席まで漂い始めると、飲食店としての信用に関わる重大問題に発展します。
従業員のモチベーション低下も無視できない影響のひとつです。
リスク②|害虫の繁殖と食品衛生上の問題
グリストラップ内に蓄積した食材カスや油脂は、害虫にとって格好のエサです。
清掃が行き届かないグリストラップは害虫の繁殖場所になりやすく、ゴキブリやコバエなどが厨房内に侵入するリスクが高まります。
最悪の場合、提供する料理に害虫が混入するという衛生事故につながります。
これは飲食店にとって致命的なトラブルであり、SNSでの拡散も相まって取り返しのつかない信用失墜につながりかねません。
リスク③|排水があふれ出す水害リスク
グリストラップのつまりが進行すると、排水が行き場を失いあふれ出します。
屋内埋設型であれば厨房の床が水浸しになり、調理作業ができなくなります。
屋内床置型は床に排水口がないケースが多く、水の処理が非常に困難です。
建物の2階以上に設置されている場合は階下への漏水リスクもあり、近隣テナントへの被害補償という問題にも発展します。
リスク④|営業停止・保健所からの行政処分
悪臭・害虫・排水不能が重なった状態では、飲食店として適切な衛生状態を保つことができません。
保健所の立ち入り検査で問題が発覚した場合、営業停止処分が下される可能性があります。
また排水管の詰まりが深刻化すると、単純な清掃では対応できず、配管工事による交換が必要になることもあります。
その場合の費用は数十万円以上になることも。
早期対処が何より重要です。
グリストラップのつまりの直し方|応急処置から業者対応まで

実際につまりが発生した場合、どのような直し方があるのかを段階別に解説します。
軽度のうちは自力で対処できる場合もありますが、重度のつまりは必ず専門業者に依頼してください。
応急処置①|ラバーカップを使った直し方
軽度のつまりであれば、ラバーカップが有効な場合があります。
やり方は、排水口にラバーカップを密着させ、圧力をかけながら引き上げる動作を繰り返すだけです。
排水口の形状に合ったタイプのラバーカップを選ぶことで効果が高まります。
ただし、長期間放置による固着油脂が原因のつまりには効果がありません。
あくまで初期対応として活用し、改善が見られない場合は早急に業者へ連絡することをおすすめします。
応急処置②|洗剤を使った直し方とその注意点
グリストラップのつまりに対して洗剤を使う方法もありますが、選び方と使い方には注意が必要です。
一般的なパイプユニッシュなどの市販洗剤は、水酸化ナトリウムによる油汚れ溶解効果がありますが、キッチンシンクからグリストラップまでの配管の軽い汚れに対する応急処置として使用するものです。
グリストラップ内の重度の油汚れには効果が不十分です。
スーパーグリスカットなど業務用の専用洗剤は、10倍に薄めてグリストラップ内に投入し、30分〜1時間放置した後に水で洗い流すやり方が一般的です。製品によって使用用途が異なるので、取扱説明書を確認しましょう。
一方で、乳化剤配合の洗剤は油脂分をサラサラにして流れやすくしますが、油脂が分解されたわけではなく下水に乳化した油脂が流れてしまいます。
これはグリストラップ本来の設置目的である「油脂を下水に流さないこと」に反しており、公正取引委員会から警告を受けた製品もあるほどです。
洗剤はあくまで応急処置として限定的に活用し、根本解決は業者への依頼を前提に考えてください。
応急処置③|吸着シート(グリースクリーン)を使う方法
グリースクリーンは水面に浮いた油脂分を吸着する専用シートです。
グリストラップの蓋を開けてゴミや固形物を取り除いたあと、シートを水面に浮かべて1時間程度待ちます。
シートが油脂を吸着したら取り出し、水を流して排水状況を確認します。
水は吸わずに油脂だけを吸着するため、取り出す際も比較的扱いやすいです。
ただしこの方法も根本的な排水管内の油汚れには対応できません。
専門業者による直し方①|ワイヤーを使った詰まり除去
業者が実施するつまり除去で最も基本的なのが、ワイヤーを使った方法です。
業務用のワイヤーは「多重ワイヤー」と呼ばれ、複数の線材を巻いた構造になっており、先端にカッターや高圧ジェットが装着されています。
太さは6〜10mm、長さは10〜20mと幅広く、汚れの状況に応じて使い分けます。
このワイヤーを「トーラー」と呼ばれる電動機器で回転させながら排水管に通し、油汚れを砕いて詰まりを貫通させます。
頑固な固着油脂には太めのワイヤーが必要ですが、細いワイヤーで貫通した場合は穴が小さいためすぐに再発することもあります。
ワイヤーによる詰まり除去の料金目安は、電動トーラーのみで15,000円〜35,000円程度です。
専門業者による直し方②|高圧洗浄機による排水管清掃
ワイヤーで詰まりを貫通させた後、または定期清掃として実施するのが高圧洗浄です。
業務用高圧洗浄機は、排水管内にこびりついた油汚れを強力な水圧で除去します。
ホームセンターで市販されている家庭用高圧洗浄機では水圧が不十分で、業務用に比べて清掃効果が大幅に劣ります。
また使い方を誤ると排水管を傷つけるリスクがあり、別のトラブルに発展することも珍しくありません。
高圧洗浄のみの料金目安は20,000円〜50,000円程度、トーラーと高圧洗浄の両方を使用する場合は35,000円〜85,000円程度が相場です。
作業距離によって料金が変動するため、事前に複数業者から見積もりを取ることをおすすめします。
重度のつまりに対するプロの処置手順
長期間放置した重度のグリストラップのつまりに対して、業者が実施する処置の手順をご紹介します。
- 排水の詰まり具合の確認・状況把握
- ハンドスコップで固形化した油脂分を除去
- 排水枡を高圧洗浄機でツルツルになるまで洗浄
- ろ過槽内を高圧洗浄し、排水が流れる状態に仕上げ
重度のつまりでは、グリストラップ内に固形化した油脂が逆流することもあります。
ハンドスコップで固形物を取り除いた後でなければ、高圧洗浄を行っても水が溜まるだけで効果がありません。
手順を誤ると清掃効率が大幅に落ちるため、この順序を守ることが重要です。
水が透明になり、キッチンからの排水がスムーズに流れることを確認して、清掃完了となります。
グリストラップのつまりを防ぐ予防方法|清掃頻度の目安と実践ポイント

グリストラップのつまりを解消するには時間も費用もかかります。
業者の立場からはっきり申し上げると、「詰まってから対処する」より「詰まらせない管理をする」ほうが圧倒的にコストが低いです。
ここでは実践的な予防方法を清掃頻度の目安とともにご紹介します。
清掃頻度の目安
| 清掃箇所 | 推奨頻度 | 主な作業内容 |
|---|---|---|
| バスケット(第1槽) | 毎日 | ゴミの除去・ネット交換 |
| 油脂分の除去(第2・第3槽) | 2〜3日に1回 | ひしゃくや網で浮き油をすくい取る |
| 沈殿物の除去 | 2〜3日に1回 | 底のヘドロ状汚泥をすくい取る |
| トラップ管の清掃 | 2〜3ヵ月に1回 | たわし・ブラシでこすり洗い |
| 業者による定期清掃 | 月1回以上(店舗規模による) | 高圧洗浄・ワイヤー清掃・汚泥処理 |
日常清掃の手順とポイント
自力でグリストラップを清掃する際に必要な道具は、ゴム手袋・長靴・バケツまたはホース・ゴミ取り網・ブラシ・ビニール袋です。
作業前には必ず換気を行ってください。
グリストラップを開けると強い悪臭が発生します。
清掃の手順は以下のとおりです。
- 蓋を開け、蓋裏の油汚れをブラシで除去する
- バスケットを取り出し、ゴミをビニール袋に入れる
- 水面に浮いた油脂の塊をゴミ取り網で除去する(産業廃棄物として処理)
- 底の沈殿物をすくい取る(同じく産業廃棄物として処理)
- トラップ管を取り外してブラシで洗浄し、再装着する
- 内壁をブラッシングしてバケツかホースで洗い流す
- 再度水面に浮いた油脂を除去する
- すべての部品を正しい位置に取り付けて蓋を閉める
- キッチンから水を流し、水が透明になるまで確認する
油脂の塊は産業廃棄物のため、一般ゴミと混ぜて廃棄することは違法です。
必ず分けて保管し、専門業者への引き渡しが必要です。
この点を見落とすと法令違反になるため、必ず守ってください。
お湯を使った配管内油汚れ防止の方法
日常的にできる簡単な予防方法として、シンクから大量のお湯を流す方法があります。
給湯器の設定温度を50〜60℃に設定し、5分間程度流し続けます。
油汚れは熱に弱いため、定期的に熱湯を流すことで配管内に固着する前に油脂を溶かすことができます。
週1回程度実施することをおすすめします。
業務用洗剤の使用と組み合わせることで、より高い予防効果が期待できます。
業者を選ぶ際の重要なポイント
グリストラップの清掃を業者に依頼する際は、以下の点を必ず確認してください。
- グリストラップ清掃の実績・件数
- 高圧洗浄機・電動トーラーなどの専門機器を保有しているか
- 産業廃棄物管理票(マニフェスト)を発行できるか
- 対応エリアと緊急時の駆けつけ時間
- 料金の透明性・相見積もりへの対応
特に産業廃棄物の処理は法令で厳格に規定されています。
マニフェストを発行しない業者は法令違反のリスクがあり、依頼した店舗側も責任を問われる可能性があります。
詰まりが発生してから慌てて業者を探すのではなく、日頃から2〜3社の信頼できる業者の連絡先を確保しておくことが重要です。
居抜き物件で開業する場合は、開店前にグリストラップの状態を業者に確認してもらうことも強くおすすめします。
まとめ
グリストラップのつまりは、油脂の固着・生ゴミの蓄積・異物混入の3つが主な原因です。
放置すると悪臭・害虫・水あふれ・営業停止という深刻なリスクに発展します。
軽度のつまりはラバーカップや業務用洗剤で応急処置できますが、重度の場合はワイヤーと高圧洗浄を組み合わせたプロの直し方が必要です。
予防の基本はバスケットの毎日清掃・油脂除去を2〜3日に1回・業者による定期清掃の実施です。
詰まってから対処するのではなく、日常管理を徹底して「詰まらせない厨房」を目指すことが、飲食店経営の安定につながります。
よくある質問
Q. グリストラップがつまったとき、まず自分でできることは何ですか?
A. まずラバーカップを使って圧力をかける方法を試してください。軽度のつまりであれば解消される場合があります。改善が見られない場合は業務用の専用洗剤を使用し、それでも解決しない場合は早急に専門業者へ連絡することをおすすめします。
Q. 市販のパイプユニッシュはグリストラップのつまりに効きますか?
A. パイプユニッシュはキッチンシンクからグリストラップまでの配管の軽い汚れに対する応急処置として使用できます。ただしグリストラップ内の重度の固着油脂には効果が不十分です。あくまで応急処置として活用し、根本解決は業者に依頼してください。
Q. グリストラップの清掃はどのくらいの頻度で行うべきですか?
A. バスケットの清掃は毎日、油脂分と沈殿物の除去は2〜3日に1回、トラップ管の清掃は2〜3ヵ月に1回が目安です。業者による専門清掃は店舗規模に応じて月1回以上を推奨します。店舗の営業規模に合わせて頻度を調整してください。
Q. グリストラップ清掃を業者に依頼するとどのくらいの費用がかかりますか?
A. 電動トーラーのみで15,000〜35,000円、高圧洗浄のみで20,000〜50,000円、両方使用する場合は35,000〜85,000円程度が目安です。定期清掃の場合は1回あたり15,000〜25,000円程度が相場ですが、グリストラップのサイズや汚れの状態によって変動します。
Q. グリストラップから取り出した油脂や汚泥はどのように処分すればいいですか?
A. 油脂の塊や汚泥は産業廃棄物に分類されるため、一般ゴミとして廃棄することは法律で禁止されています。専門業者に引き渡す際には産業廃棄物管理票(マニフェスト)の発行が必要です。この手続きが行える業者を選ぶことが業者選定の重要なポイントです。
記事の監修者
島尻 博富士水道センター
水道工事や各種水回りの修理に従事して35年間。大規模修繕工事の計画~実施までの対応も可能。保有国家資格(給水装置工事主任技術者、一級管工事施工管理技士、一級建築配管技能士)。2023年1月25日放送 テレ朝スーパーJチャンネルで強烈寒波の報道に出演。













