
和式トイレとは?特徴・使い方・リフォームのポイントをわかりやすく解説!
トイレ
更新日 : 2025年11月11日

富士水道センター編集部
和式トイレは、昔ながらの日本家屋や公共施設などに多く残るタイプの便器です。
現在では洋式トイレが主流になっていますが、和式には独自の構造やメリットも存在します。
本記事では、和式トイレの特徴や使い方、掃除方法、そして洋式トイレへのリフォーム方法まで詳しく解説します。
目次
和式トイレとは?構造・仕組み・歴史をわかりやすく解説

日本の住宅文化を語るうえで欠かせない存在が「和式トイレ」です。
洋式トイレが主流になった現在でも、和式トイレは古民家や公共施設、寺社などに数多く残っています。
しゃがんで使うという独特の姿勢や、独自の構造には日本人の生活様式や衛生観念が深く関係しています。
ここでは、和式トイレの基本構造から仕組み、そして時代の流れとともに変化してきた歴史まで、丁寧に解説します。
和式トイレの基本構造と仕組み
和式トイレは、床面に陶器製の便器を埋め込み、その上にしゃがんで使用する形式のトイレです。
便器の奥が高く、手前が低くなっており、使用時の姿勢を安定させると同時に排水の流れを助ける形状をしています。
排泄物は便器の底部から排水管へと流れ、水の勢いで一気に押し流されます。
便器の排水方式には「床排水式」「汲み取り式(非水洗)」などがありますが、現代では主に水洗式が主流です。
構造がシンプルなため、電源を使わずに機能し、停電時でも使用できるのが特徴です。
また、便座や複雑な可動部がないため、壊れにくく、メンテナンス性にも優れています。
ただし、床に近い位置で使うことから、床や周囲の掃除を怠ると臭いや汚れが発生しやすい点には注意が必要です。
和式トイレの歴史と日本文化との関わり
和式トイレの歴史をひも解くと、日本人の暮らし方や衛生観念の変化が見えてきます。
以下の表は、和式トイレの発展を時代ごとにまとめたものです。
日本のトイレの歴史と変遷
| 時代 | 主な排泄施設の形態 | 特徴・背景 |
|---|---|---|
| 縄文〜弥生〜古墳時代 | 自然池・溝・土間利用(「川屋」など) | 自然排水・肥料利用以前。トイレ施設としての明確な便器は少ない。 |
| 奈良〜平安時代 | 貴族用「糞箱(ひばこ)」等、木製・土間式の便所 | 「糞箱」は位の高い人が使った便所で、衣かけ=「きぬかけ」が設けられていたとされる。 |
| 鎌倉〜江戸時代 | 汲み取り式便所(下肥利用)・土間式和式便器が地方・寺社などで普及 | 糞尿が肥料として使われ、汲み取りが主流。和式便器の原型が広がる。 |
| 明治〜大正時代 | 陶器製便器登場、腰掛式(洋式便器)も開発開始 | 西洋文化の影響で「腰掛式」洋便器が国産化されるなど、トイレ様式が変わり始める。 |
| 昭和(戦後)〜高度成長期 | 水洗式和式便器が一般化。洋式トイレへの移行期に入る | 下水道・水洗化が進み、和式便器が多数使われる時代。後に洋式普及が加速。 |
| 現代 | 和式便器の割合は低下するも、文化・公共用途で残存 | 和式は「古い」と思われがちだが、文化的・衛生的理由から残るケースもある。 |
このように、和式トイレは「自然」「循環」「衛生」といった日本独自の価値観とともに発展してきました。
特に江戸時代の「下肥文化」は、排泄物を無駄にせず再利用するというサステナブルな考え方の原点ともいえます。
現代では、洋式トイレの普及により数は減少しましたが、歴史的建造物や神社仏閣では和式トイレが日本らしさの象徴として残されています。
また、災害時の仮設トイレやキャンプ施設などでは、構造が単純で壊れにくいことから、和式の仕組みを応用したトイレが今も利用されています。
和式トイレのメリット・デメリット

洋式が主流になった今でも、和式トイレには根強い支持があります。 ここでは、和式トイレの長所と短所を整理しておきましょう。
和式トイレのメリット:衛生的で自然な排泄姿勢がとれる
和式トイレの最大の特徴は、「しゃがんで使う」という点にあります。
しゃがむ姿勢では大腸がまっすぐになり、排泄がスムーズに行えることが医学的にも知られています。
また、便座に直接座らないため、他人との接触が少なくなるのもポイントです。
さらに、構造が非常にシンプルなため、停電時や災害時にも使用できる点も大きな魅力。
温水洗浄便座のような電気部品がないため、壊れにくく長持ちするのも和式ならではの利点です。
【主なメリット一覧】
- 便座に座らないため他人との接触がなくなる
- 腸がまっすぐになり、排泄しやすい
- 構造が単純で、故障リスクが低い
- 停電時や災害時にも使える
- 設置費用や修理費が比較的安い
また、掃除の面でも、便器の内側が浅く構造が単純なため、ブラシでの清掃がしやすいというメリットもあります。
定期的に洗剤でこすれば、常に清潔な状態を保つことが可能です。
和式トイレのデメリット:高齢者には不向きで掃除も大変
一方で、和式トイレには明確なデメリットも存在します。
最大の問題は、しゃがむ姿勢が「足腰に負担をかける」という点です。
高齢者や膝・腰に痛みのある方にとっては、立ち上がる動作が非常に大変で、転倒のリスクも高まります。
また、便器が床に近いため、飛び散りやすく、床全体の掃除が欠かせません。
便座がない分だけ構造は簡単ですが、使用後に水や尿が床に広がることがあるため、こまめな清掃が必要です。
特に、住宅内で和式を使用している場合は、臭いや湿気がこもりやすい点にも注意しましょう。
【主なデメリット一覧】
- 足腰への負担が大きい(高齢者には不向き)
- 使用後の掃除範囲が広く、手間がかかる
- 現代住宅では設計上の制約が多い
- 座る習慣のある外国人や子どもには使いにくい
- バリアフリー化には不向き
さらに、住宅のバリアフリー化が進む中で、和式トイレは段差の解消や改修が難しいという課題も。
そのため、高齢者の住まいでは洋式化が推奨されるケースが多く、リフォームの相談が増えています。
和式トイレを選ぶかリフォームするかの判断基準

和式トイレは、掃除や姿勢の問題を除けば非常に合理的な構造を持っています。
耐久性・衛生性を重視するならそのまま使用も可能ですが、「家族に高齢者がいる」「毎日の掃除が大変」「狭い空間で使いにくい」と感じる場合は、洋式トイレへのリフォームを検討するのがおすすめです。
また、近年では「和式便器に洋式カバーを取り付ける」タイプの簡易リフォームもあり、段階的に使いやすさを高める方法も選択できます。
和式トイレと洋式トイレの違いを比較

和式トイレは、しゃがむことで腸がまっすぐになり、排泄がスムーズになるという医学的な利点があります。
一方で、足腰への負担が大きく、高齢者や身体の不自由な方にとっては使いにくい面があるのも否めません。
以下の表で両者の特徴を整理してみましょう。
和式トイレと洋式トイレの比較
| 比較項目 | 和式トイレ | 洋式トイレ |
|---|---|---|
| 姿勢 | しゃがむ | 座る |
| 接触面 | 便座に座らない(衛生的) | 便座に座る |
| 排水方式 | 床排水式が主流 | 壁排水・床排水など多様 |
| 掃除のしやすさ | 床の清掃が必要 | 便座中心の清掃で済む |
| 利便性 | 高齢者には不向き | 誰でも使いやすい |
| 設置場所 | 古民家・公衆トイレなど | 住宅・商業施設など |
和式トイレの正しい使い方と利用時のマナー

和式トイレは日本では長く使われてきた設備ですが、若い世代や外国人観光客の中には「どう使うのか分からない」という声も多く聞かれます。
構造を理解していれば簡単に使えるため、ここでは正しい姿勢や向き、使用時のマナーをわかりやすく説明します。
特に、家庭や公共施設での利用時に押さえておきたいポイントをまとめました。
和式トイレの正しい使い方としゃがみ方のコツ

和式トイレの使い方の基本は、便器の高くなっている側(タンクのある方)を正面にしてしゃがむことです。
足を左右に開き、便器の上にまたがるようにしてしゃがみます。
この姿勢により重心が安定し、自然な体勢で排泄しやすくなります。
しゃがむときは、便器の中央付近に重心を置き、背中を軽く丸めるようにしましょう。
前のめりになりすぎるとバランスを崩しやすく、逆に後ろに寄りすぎると水がはねる原因になります。
両足をしっかり床につけ、体を安定させることがポイントです。
正しい使用手順の例
- ドアを背にして便器をまたぐ(タンクを背中側に)
- ズボンや下着をひざ下まで下ろす
- 両足を肩幅程度に開き、便器の上にしゃがむ
- 排泄が終わったらトイレットペーパーで拭く
- 紙を便器に入れて水を流す
和式トイレの便器は構造上、勢いよく水を流すと跳ね返りが起きやすいため、流すときは一度立ち上がってから水を流しましょう。
和式トイレ使用時の注意点とエチケット
和式トイレを快適に使うには、ちょっとした注意が必要です。
特に公共施設では、次に使う人への配慮が大切です。
【使用時の注意点】
- トイレットペーパーは必ず「流せるタイプ」を使用する
- 汚物を直接流す際は、水を多めに流して詰まりを防ぐ
- 便器外への飛び散りを防ぐため、しゃがむ位置を調整する
- 水を流す際は、立ち上がってからレバーを操作する
- 使用後は必ず便座周辺の汚れを確認し、汚れがあればペーパーで拭く
また、和式トイレでは靴やスリッパを履いたまま使用します。
ただし、旅館や古民家などでは「トイレ用スリッパ」に履き替える習慣があるため、施設のルールに従いましょう。
【公共施設でのマナー】
- 使用後は水をしっかり流し、汚れを残さない
- 紙や生理用品などを流さない(詰まりの原因)
- スリッパがある場合は必ず履き替える
- トイレットペーパーが切れていたら係員に知らせる
和式トイレは直接座らない分、衛生的に使いやすいですが、掃除やマナーを怠るとすぐに汚れが目立ってしまいます。
次の人が気持ちよく使えるよう、「使う前よりきれいにする」意識を持つことが大切です。
子どもや外国人への使い方の教え方
和式トイレを初めて使う子どもや外国人は、どちらを向けばいいのか、どの位置にしゃがめばいいのか戸惑うことがあります。
説明するときは、「高い方を正面に」と伝えると分かりやすいでしょう。
また、体のバランスを取るために壁や手すりを軽く支えるよう指導しておくと安全です。
外国人観光客向けには、イラスト付きの案内を貼る施設も増えています。
和式トイレは日本ならではの設備であり、正しく案内することで文化理解の一助にもなります。
和式トイレの掃除・お手入れ・日常メンテナンス方法

和式トイレは、床や壁が広く露出している分、洋式トイレよりも汚れが目立ちやすい傾向があります。
しかし、構造がシンプルなため、正しい掃除手順を押さえれば比較的短時間できれいに保つことができるのが魅力です。
この章では、汚れがつきやすい場所や、重曹・クエン酸などを活用した掃除のコツ、そして日常的に行いたいメンテナンス方法を紹介します。
汚れやすい場所をチェックしておこう
和式トイレは、しゃがんで使用するため、飛び散りやすい箇所や湿気がこもりやすい部分があります。
特に以下の場所は汚れが蓄積しやすく、臭いの原因にもなるため注意が必要です。
【汚れやすい主な箇所】
- 便器の縁まわり:尿石や黄ばみが発生しやすい部分。時間が経つと固着して落ちにくくなります。
- 床面(便器の周囲):飛び散った尿や水が乾いてシミや臭いの原因に。
- 壁際・巾木(はばき)部分:尿の飛沫や湿気で黒ずみやカビが出やすい。
- 排水口付近:汚れが溜まりやすく、異臭が発生しやすい箇所。
掃除の際は、まずこれらの箇所を重点的にチェックし、汚れの性質(尿石・カビ・ホコリなど)に応じて洗剤を使い分けましょう。
和式トイレの基本的な掃除手順
和式トイレは便座がないため、掃除の際は全体を広く拭き取ることが大切です。
以下のステップを順に行うと、効率的に清潔を保てます。
1.換気をする
掃除を始める前に窓を開けるか換気扇を回して、空気の入れ替えをします。
2.ゴム手袋とマスクを着用する
洗剤を使用する場合、皮膚や粘膜を保護するために必ず着用しましょう。
3.便器の内側を掃除する
尿石や黄ばみが気になる場合は酸性洗剤(クエン酸やサンポールなど)を使用し、ブラシで丁寧にこすります。
4.床・壁を中性洗剤で拭く
便器周りや床面は、家庭用中性洗剤を薄めた水で拭き上げます。
汚れが強いときは重曹水(重曹小さじ1+水200ml)を使うと効果的です。
5.仕上げに乾拭きと消臭スプレー
水分を残すとカビが発生しやすいため、乾いた雑巾で拭き上げて仕上げます。
最後に消臭・抗菌スプレーを吹きかけておくと、清潔感を長く保てます。
この一連の流れを週に1〜2回行うことで、和式トイレを快適な状態に保つことができます。
重曹やクエン酸を使ったナチュラル掃除術
和式トイレの掃除には、市販の強力洗剤だけでなく、家庭にある自然由来のアイテムも役立ちます。
とくに「重曹」と「クエン酸」は、臭い・尿石・カビに効果的で、環境にもやさしい方法です。
尿石や黄ばみにはクエン酸
クエン酸水(クエン酸小さじ1+水200ml)をスプレーして10分ほど置き、ブラシでこすり落とします。
便器の縁など、落ちにくい部分はトイレットペーパーでパックすると効果的です。
床や壁の汚れには重曹
重曹水をスプレーして布で拭き取ることで、皮脂汚れや臭いを軽減できます。
掃除後に軽く乾拭きすることで、湿気や黒カビの発生も抑えられます。
仕上げにアルコールスプレー
除菌と消臭を兼ねて、最後にアルコールスプレーを使うと衛生的です。
この「ナチュラル掃除術」は、子どもやペットがいる家庭でも安心して取り入れられる点が魅力です。
日常メンテナンスと臭い対策のポイント
和式トイレは、日常的なひと手間で快適さが大きく変わります。
特に臭いやカビを防ぐためには、「湿気を残さない」「換気を続ける」ことが重要です。
- 使用後は必ず換気扇を回し、湿気を逃がす
- テ便器や床の水滴を拭き取り、乾燥を保つ
- 週1回は排水口にぬるま湯を流して臭いを予防
- 床や壁に防臭マット・抗菌シートを設置する
これらを続けることで、和式トイレ特有の臭いやぬめりを防ぎ、清潔な状態を長く維持できます。
和式トイレによくあるトラブルと対処法

和式トイレは構造がシンプルで壊れにくい反面、長年使っているうちに劣化やトラブルが発生することがあります。
特に多いのは「水漏れ」「詰まり」「臭い」の3つ。
いずれも放置すると床下腐食や配管損傷などの二次被害につながるため、早めの対処が大切です。
ここでは、トラブルの原因と応急処置、そして業者に依頼すべきタイミングを解説します。
水漏れトラブルの原因と応急処置
和式トイレの水漏れは、主に接続部分の劣化やひび割れが原因です。
便器自体が古い場合や、配管まわりのパッキンが緩んでいる場合にも起こります。
【主な原因】
- 便器やタイルにヒビが入っている
- タンクと給水管の接続部が緩んでいる
- パッキンやゴム製部品の経年劣化
- 床との設置部分(フランジ)のゆるみ
【応急処置の手順】
- まず止水栓を閉めて水の流れを止める
- タンクや給水管の接続部を確認し、ナットの緩みを軽く締め直す
- 水を拭き取り、どこから漏れているかを観察する
- ヒビや破損が見られる場合は防水テープで一時的に補修
根本的な修理は、専門の水道業者に依頼するのが確実です。
便器にヒビが入っている場合、目に見えない部分まで損傷していることが多く、便器交換が必要になるケースもあります。
詰まりの原因と自分でできる対処法
和式トイレは排水口が浅く、便器の奥が細い構造のため、洋式よりも詰まりやすいという特徴があります。
特に、トイレットペーパーの使いすぎや異物の落下が詰まりの主な原因です。
【よくある詰まりの原因】
- トイレットペーパーを一度に大量に流した
- 携帯電話や生理用品など異物を落とした
- 長年の汚れや尿石で配管が細くなっている
【自分でできる対処法】
ラバーカップ(スッポン)を使う
排水口を完全に覆い、押し引きをゆっくり繰り返します。
数回試しても改善しない場合は、無理に続けず次の方法へ。
ぬるま湯+中性洗剤を流す
便器内にぬるま湯(50℃以下)を入れ、食器用洗剤を少量加えます。
30分ほど放置してから水を流すと、軽い詰まりなら解消する場合があります。
パイプクリーナーを使用
配管内の尿石や汚れを溶かすタイプのクリーナーも有効ですが、使いすぎると陶器を傷めるため注意が必要です。
業者に依頼するタイミング
水がまったく引かない・ラバーカップで改善しない場合は、排水管の奥で詰まりが発生している可能性があります。
この場合は自力での対応が難しく、業者に高圧洗浄や配管点検を依頼するのが安全です。
異臭やカビ・尿石トラブルの対策
和式トイレの異臭は、尿石やカビ・排水トラップの乾燥が原因です。
とくに長期間使っていないトイレでは、封水(排水管内の水)が蒸発して悪臭が上がることがあります。
【異臭・カビの主な原因】
- 便器の縁裏に付着した尿石
- 床や壁のカビ・湿気
- 排水トラップの水切れ(使用頻度が低い場合)
【対処法】
- クエン酸スプレーで尿石を溶かす
- 床や壁をアルコールで拭き取り除菌
- 週に一度は少量の水を流して排水トラップの封水を保つ
- 換気扇を常時回し、湿気をためない
また、トイレの隅や目地の黒カビは、メラミンスポンジや塩素系漂白剤でこすり落とすと効果的です。
定期的に「洗浄+乾燥」を意識することで、臭いの発生を最小限に抑えられます。
トラブルを未然に防ぐためのメンテナンス習慣
和式トイレのトラブルは、日頃の点検と掃除で大部分を防ぐことができます。
- 月に1回、配管のゆるみや床のシミをチェック
- 封水が減っていないか確認(異臭防止)
- 尿石が固まる前にクエン酸で掃除
- タンクや給水管のパッキンを5年ごとに交換
小さな違和感を放置せず、早めに点検することが長持ちの秘訣です。
特に築20年以上の住宅では、配管そのものが老朽化している場合もあるため、業者による定期点検をおすすめします。
和式トイレを洋式トイレにリフォームする方法

和式トイレは構造がシンプルで丈夫ですが、足腰への負担や掃除の手間を考えると、 「そろそろ洋式に替えたい」と考える家庭も多いでしょう。
実際のところ、住宅リフォームの中でもトイレ交換は人気が高く、工期も短いため手軽に行える工事です。
ここでは、和式トイレを洋式にリフォームする際の流れや費用相場、補助金制度について詳しく紹介します。
和式トイレを洋式に変えるリフォームの種類
和式トイレのリフォームには、大きく分けて「簡易タイプ」と「フルリフォームタイプ」の2種類があります。
設置スペースや予算、使う人の年齢に応じて、最適な方法を選びましょう。
簡易タイプは、現在の和式便器を残したまま便座だけ取り付ける方法です。
1日以内に施工が完了するため、費用を抑えたい方や仮設住宅・賃貸物件などでよく採用されています。
一方で、しっかりと洋式トイレへ切り替えたい場合は「フルリフォーム」がおすすめです。
便器や床材、排水管などを一新するため費用はかかりますが、耐用年数や快適性が大きく向上します。
リフォームにかかる工期と施工内容の目安
和式トイレを洋式トイレにリフォームする際の工期は、施工の規模によって大きく変わります。
「便座を取り付けるだけ」の簡易タイプなら1日もかからず、一方で床や配管の改修を伴う場合は数日かかるのが一般的です。
以下の表では、それぞれのリフォーム内容と工期の目安をまとめました。
和式トイレから洋式トイレへのリフォームタイプ比較
| リフォームタイプ | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 簡易タイプ(アタッチメント型) | 和式便器の上に洋式便座を設置 | 工期が短く、低コスト。賃貸や仮設利用に向く。 |
| フルリフォームタイプ | 既存の便器を撤去し、洋式トイレを新設 | 床・壁も改修するため見た目も一新。耐久性・快適性が高い。 |
和式トイレは便器が床に埋め込まれているため、撤去後に床の補修や排水位置の調整が必要となり、工事にやや時間を要します。
そのため、単純な交換工事ではなく、下地処理・防水対策・内装仕上げといった複数の工程が発生する点がポイントです。
また、住宅の構造によっては排水方向や配管の径が特殊な場合もあるため、現地調査の際に追加作業の有無を確認しておきましょう。
古い住宅やタイル床の場合は、耐水性の高い素材へ変更することで長持ちしやすくなります。
リフォーム自体は比較的短期間で完了しますが、快適さやデザイン性を重視するなら、内装と機能性を同時に見直すことをおすすめします。
和式トイレのリフォームで利用できる補助金・助成金制度

和式トイレを洋式トイレにリフォームする際は、自治体や国の補助制度を活用できる場合があります。
とくに高齢者や要介護者がいる世帯では、「バリアフリー化」や「住宅改修」に該当し、リフォーム費用の一部を補助してもらえるケースがあります。
ここでは、代表的な制度と申請の流れ、注意点をまとめました。
主な補助金・助成金の種類と概要
和式トイレの洋式化に関連する補助制度は、主に3種類に分けられます。
目的に応じて、利用できる制度を確認しましょう。
| 制度名 | 対象者 | 主な内容 | 窓口 |
|---|---|---|---|
| 高齢者住宅改修費補助金(市区町村制度) | 高齢者・障がい者がいる家庭 | 段差解消・手すり設置・和式から洋式への改修などを補助 | 各自治体の住宅課・福祉課 |
| 介護保険住宅改修費支給制度 | 要支援・要介護認定を受けた人 | トイレの洋式化や手すり設置など、介護負担軽減のための改修に支給 | 介護保険担当窓口・ケアマネジャー経由 |
| 省エネ・節水型トイレ導入補助(国・自治体) | 一般世帯 | 節水型・エコトイレの設置による環境負荷低減を目的とした補助制度 | 国土交通省・地方自治体 |
これらの制度は、年度ごとに内容が変わる場合があります。
特に国の補助事業(例:こどもエコすまい支援事業など)は期間限定のため、申請時期を逃さないよう注意が必要です。
補助金を申請するまでの流れ
補助金の申請は、工事を始める前に手続きを行う必要があります。
多くの制度では、「事前申請 → 審査 → 工事 → 完了報告 → 支給」の流れです。
対象制度の確認
自治体やケアマネジャーに相談し、自宅が制度の対象かどうかを確認します。
見積書・図面の提出
施工業者から正式な見積書を取得し、申請書と一緒に提出します。
審査・承認
自治体による審査を経て、補助金の交付が決定します。
工事着工・完了報告
承認後に工事を実施し、完了写真などを添えて報告書を提出します。
補助金の支給
確認が取れ次第、指定口座に補助金が振り込まれます。
申請から支給までは1〜2か月程度かかる場合がほとんどです。
申請時の注意点とチェックポイント
補助金を確実に受け取るためには、次のポイントを押さえておきましょう。
- 事前に申請を行う(工事後は対象外になる場合が多い)
- 補助対象となる工事範囲(便器交換・床工事・手すり設置など)を確認する
- 業者が「補助金申請サポート」に対応しているかチェックする
特に「和式から洋式への交換」は、バリアフリー改修や介護負担軽減として認められることが多いため、対象となる制度が複数ある場合は併用の可否も確認しておくとよいでしょう。
和式トイレに関するよくある質問(FAQ)

和式トイレに慣れていない方や、リフォームを検討している方からよく寄せられる質問をまとめました。
使い方や掃除、トラブル対応など、よくある疑問をここで一気に解決していきましょう。
Q1. 和式トイレの正しい向きがわかりません。どちらを向いて使えばいいですか?
和式トイレは、高い方を正面にしてしゃがむのが正しい使い方です。
逆向きにしゃがむと姿勢が不安定になり、汚れやすくなるため注意が必要です。
Q2. 和式トイレの掃除はどのくらいの頻度で行えばいいですか?
汚れを防ぐためには、週に1〜2回の掃除が理想です。
特に便器の縁や床まわりは尿石や臭いの原因になりやすいため、こまめな清掃が重要です。
日常的には、使用後に床や壁をペーパーで軽く拭く習慣をつけると、臭いの発生を大幅に防げます。
Q3. 和式トイレの詰まりを自分で直すことはできますか?
軽度の詰まりであれば、ラバーカップ(スッポン)を使って対処可能です。
排水口をしっかり密着させて押し引きを繰り返し、水の流れを確かめてください。
それでも解消しない場合や水がまったく引かない場合は、排水管の奥で詰まっている可能性があります。
無理に続けると配管を傷める恐れがあるため、早めに業者へ依頼しましょう。
Q4. 和式トイレを洋式トイレに替えるとき、どんな業者に依頼すればいいですか?
リフォームを安全に行うためには、水道局指定工事店への依頼がおすすめです。
指定工事店は資格と技術を持った業者であり、配管工事や防水施工などを適切に行えます。
また、補助金や介護保険を利用する場合、指定業者でなければ申請が通らないケースもあります。
見積もりの際には、施工保証やアフターサービスの内容も確認しておきましょう。
Q5. 和式トイレの臭いが取れません。どんな対策がありますか?
臭いの主な原因は尿石と湿気です。
クエン酸スプレーを便器の縁や床に吹きかけ、10分ほど放置してからブラシでこすりましょう。
また、換気扇を常時回して湿気をためないことが大切です。
床や巾木(はばき)部分に防臭マットや消臭シートを敷くのも有効です。
Q6. 和式トイレを使いやすくする方法はありますか?
完全なリフォームを行わなくても、洋式カバーや便座アタッチメントを取り付けることで使いやすくなります。
これらは既存の便器に載せるだけで設置でき、しゃがむ負担を軽減してくれます。
また、手すりの設置や段差解消を行うだけでも、使いやすさが大きく向上します。
このように、和式トイレは正しい知識と工夫があれば、快適で衛生的に使うことができます。
次の章では、この記事全体の要点を整理し、和式トイレとの上手な付き合い方をまとめます。
まとめ ― 和式トイレは「古い」だけじゃない
和式トイレは「古い設備」と思われがちですが、実は日本人の生活様式に合った合理的な構造を持っています。
便座に座らず衛生的で、停電時でも使えるシンプルさが魅力です。
一方で、足腰の負担が大きいというデメリットもあります。
和式トイレを使用していて不便を感じている方は、リフォームを検討してみましょう。
補助金がでることもあるので、事前にチェックしてみてください。
記事の監修者

島尻 博富士水道センター
水道工事や各種水回りの修理に従事して35年間。大規模修繕工事の計画~実施までの対応も可能。保有国家資格(給水装置工事主任技術者、一級管工事施工管理技士、一級建築配管技能士)。2023年1月25日放送 テレ朝スーパーJチャンネルで強烈寒波の報道に出演。













