
汲み取り式トイレを徹底解説|仕組み・つまりの原因・水洗化の費用を水道専門業者がわかりやすく解説
トイレ
更新日 : 2025年11月10日

富士水道センター編集部
「汲み取り式トイレって、どういう仕組みなの?」
「臭いやつまりを改善するには?」
このような疑問をお持ちではありませんか?
本記事では、汲み取り式トイレの構造や種類、つまりの原因と解消法、さらに水洗トイレへリフォームする際の費用や補助金制度までを、富士水道センターがわかりやすく解説します。
古いトイレの使いにくさや不衛生さを解消し、快適なトイレ環境を整えるためのポイントをぜひご覧ください。
目次
汲み取り式トイレとは?

汲み取り式トイレとは、排泄物を下水道に流さず、地中の「便槽」にためて定期的に汲み取る方式のトイレです。
水を使わないため「非水洗式トイレ」とも呼ばれ、下水設備が整っていない地域や山間部、仮設住宅などで現在も利用されています。
構造がシンプルで設置費用が安く、水道代がかからない点が特徴ですが、一方で臭いや衛生面の課題のあるトイレです。
近年では、便槽に少量の水を使う「簡易水洗トイレ」など、使い勝手を改善したタイプも登場しており、暮らしに合わせた選択肢が広がっています。
汲み取り式トイレの仕組みと種類

同じ汲み取り式トイレでも構造やタイプによって、臭いのこもり方やメンテナンスの手間が大きく違います。
それぞれの仕組みを知ることで、今抱えている悩みを少しでも軽くできるかもしれません。
ここでは、現在多くのご家庭で使われている3つのタイプを紹介します。
- 和式汲み取り式トイレ
- 洋式汲み取り式トイレ
- 簡易水洗トイレ
それぞれの特徴を理解することで、より清潔で快適なトイレ環境づくりのヒントが見つかるはずです。
和式汲み取り式トイレ
和式汲み取り式トイレは、昔ながらの家庭や古い公共施設で多く使われているタイプです。
床面に設けられた便器の下に便槽があり、排泄物がそのまま落ちていく仕組みになっています。
水を使わないため停電時や断水時でも利用でき、構造が非常にシンプルなのが特徴です。
一方で、便槽内に臭いがこもりやすく、夏場は悪臭や虫の発生が起こりやすいという欠点があります。
定期的な汲み取りや換気を怠ると衛生状態が悪化するため、日常的な管理が欠かせません。
現在は数が減少していますが、山間部や古民家などでは今も使用されています。
洋式汲み取り式トイレ
洋式汲み取り式トイレは、一般的な洋式トイレと見た目はほとんど同じですが、排泄物を下水に流さず、便槽にためる仕組みになっています。
便座に腰かけて使うため、和式に比べて体への負担が少なく、高齢者や小さな子どもにも使いやすいのが特徴です。
ただし、水を使わない構造のため、臭いがこもりやすく、便槽の清掃や換気を怠ると不衛生になりやすい点には注意が必要です
便槽の密閉性を高めたり、消臭剤や換気扇を活用したりすることで、より快適な環境を保つことができます。
簡易水洗トイレ
簡易水洗トイレは、汲み取り式トイレの便槽を活かしつつ、少量の水で排泄物を流すタイプです。
便器の内部には水封構造があり、排泄後に少しだけ水を流すことで臭気の逆流を防ぎ、衛生的に使えるよう設計されています。
下水道が整備されていない地域でも設置できるため、完全な水洗トイレに比べて工事費用を抑えられるのも魅力です。
定期的な汲み取りは必要ですが、従来の汲み取り式に比べて臭いが軽減され、使い心地も大きく向上します。
現在では、古い住宅を中心にこの簡易型へリフォームする家庭も増えています。
汲み取り式トイレがつまる原因とは?

「最近、流れが悪い」「水を流しても便が残る」そんな経験はありませんか。
つまりの主な原因としては、次のようなものが挙げられます。
- トイレットペーパーや掃除シートなどが溶けきらずに残る
- 汲み取りの回数が不足し、便槽が満杯になっている
- フラッパー弁(臭気を防ぐ部品)の不具合で排泄物が流れにくい
それぞれの原因によって対処法は異なります。
ここからは、代表的な3つのケースを詳しく見ていきましょう。
つまりの原因➀:トイレットペーパーや掃除シート等がつまる
汲み取り式トイレで最も多いトラブルの一つが、トイレットペーパーや掃除用シートなどによるつまりです。
水洗トイレのように強い水流で流す仕組みがないため、紙が溶けきらず便槽の入り口付近に残ってしまうことがあります。
特に厚手のペーパーや流せるタイプの掃除シートは分解されにくく、少しずつ堆積して排泄物の流れを妨げてしまうケースも少なくありません。
また、ペーパーの使い過ぎもつまりの原因につながります。
使用量を抑えるほか、トイレ専用の薄手タイプを選ぶとトラブルを減らせます。
すでに排水の流れが悪くなっている場合は、無理に押し流そうとせず、早めに業者へ相談するのが安心です。
つまりの原因②:汲み取り不足により便が蓄積されている
長期間、汲み取りを行っていないことも、つまりの原因になります。
便槽の容量には限りがあり、排泄物が溜まりすぎると、流れ込むスペースがなくなってしまうのです。
結果として、便やトイレットペーパーが便槽の入口付近で滞留し、悪臭や逆流を引き起こすことがあります。
特に、家族の人数が多い家庭や来客の多い時期は、思っているよりも早く便槽が満杯になるケースも珍しくありません。
「最近、流れが悪い」「臭いが強くなった」と感じたら、まずは汲み取りの時期を確認してみましょう。
定期的な汲み取りを依頼し、便槽内を清潔に保つことが、つまりや臭いを防ぐいちばんの近道です。
つまりの原因③:フラッパー弁に不具合が発生している
一部の汲み取り式トイレの内部には、「フラッパー弁」と呼ばれる部品があります。
便槽と便器の間で開閉し、臭いやガスの逆流を防ぐ重要な役割を担っている部品です。
フラッパー弁が劣化したり、汚れや固形物が挟まったりすると、排泄物がスムーズに落ちず、つまりの原因になることがあります。
また、フラッパー弁が完全に閉じなくなると、臭いが上がってくることもあります。
ゴム製や樹脂製の部品は年数とともに硬化しやすく、密閉性が下がるため、定期的な点検が欠かせません。
自分で直そうとすると破損する恐れがあるため、異常を感じたときは無理に分解せず、専門業者に修理や交換を依頼しましょう。
【自分でできる】汲み取りトイレのつまりを解消する方法とは?

汲み取り式トイレがつまってしまうと、流れが悪くなるだけでなく、悪臭や逆流を引き起こすおそれがあります。
軽いつまりであれば自分で解消できるケースもありますが、誤った方法で無理に流そうとすると、便槽や配管を傷めてしまう危険もあるため注意が必要です。
ここでは、安全に試せる2つの解消法を紹介します。
- お湯を流して固まった汚れをやわらかくする方法
- ラバーカップを使って圧力でつまりを取り除く方法
いずれも身近な道具で行える応急処置です。落ち着いて手順を確認しながら進めていきましょう。
解消法➀:お湯を流す
汲み取り式トイレのつまりは、トイレットペーパーなどが固まって便槽の入り口をふさいでいるケースが多く見られます。
そのような場合は、熱すぎないお湯を使って溶かす方法が有効です。以下の手順で試してみましょう。
- バケツややかんで40〜50℃程度のお湯を用意する(沸騰したお湯は便器を傷めるためNG)
- つまりのある便器にゆっくりと注ぎ入れ、10〜15分ほど放置する
- 時間をおいたあと、少量の水を流して様子を見る
紙や汚れが柔らかくなり、自然に流れる場合があります。
ただし、何度試しても改善が見られない場合は、無理にお湯を追加せず、便槽のつまりが進行している可能性を考えましょう。
解消法②:ラバーカップ(すっぽん)を使う
お湯を流してもつまりが取れない場合は、ラバーカップ(通称:スッポン)を使った方法を試してみましょう。
汲み取り式トイレでは排水構造が水洗とは異なるため、強く押しすぎず、ゆっくりと圧力をかけることがポイントです。
- 便器の排水口を覆うようにラバーカップをしっかり密着させる
- 勢いよく押し込まず、空気を抜くようにゆっくり押して引く動作を繰り返す
- つまりが解消されたら、少量の水を流して正常に排水されるか確認する
力任せに扱うと、便槽や配管を傷めるおそれがあります。
何度か試しても改善しない場合は、排出口の奥や便槽側で詰まりが発生している可能性が高いため、専門業者に点検を依頼しましょう。
【業者に依頼】が必要なケース

お湯を流したりラバーカップを使ったりしてもつまりが解消しない場合、原因がより深い部分に及んでいる可能性があります。
汲み取り式トイレは見た目こそ単純に見えますが、便槽や配管の内部は複雑で、個人での修理には限界があるものです。
- お湯やラバーカップ(スッポン)で直らない場合
- 便槽や配管の詰まり・破損が原因の場合
業者に依頼が必要となるケースは、大きく次の2つです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
お湯やラバーカップ(すっぽん)で直らない
お湯を流したりラバーカップを使ったりしても改善しない場合、つまりの原因が便槽や配管の奥にある可能性があります。
見えない部分で固形物がこびりついていたり、フラッパー弁の不具合で流れが止まっていたりするかもしれません。
この段階で無理にお湯を追加したり、力任せに押し込んだりすると、便槽やパイプの破損につながるおそれがあります。
つまりが深刻化しているサインは、次のような状態です。
- 水を流すと一時的に上まで水位が上がる
- 数分後にゆっくりと水が引く
- 悪臭が強くなり、便器周辺に臭気がこもる
このような症状が出ている場合は、自分での対処をいったんやめ、速やかに専門業者へ点検を依頼しましょう。
早めの対応が、修理費用の抑制にもつながります。
便槽や配管の詰まり・破損が原因の場合
お湯やラバーカップで解消しない場合、便槽や配管の奥で詰まりが発生している可能性が考えられます。
便槽内部に汚れや紙が固まっていたり、配管の継ぎ目に異物が引っかかっていたりするケースです。
長期間の使用によって配管がひび割れたり、接続部がずれて排泄物が流れにくくなることもあります。
このような不具合は、目に見えない箇所で進行する点が厄介です。
無理に水を流したり押し流したりすると、破損部分から汚水が漏れ、床下や地中の汚染につながるおそれがあります。
トイレ下部に湿気がある、便槽の水位が変わらないなどの症状が見られる場合は、内部トラブルが進行しているサインです。
早めに専門業者へ相談し、点検を依頼する判断が求められます。
汲み取り式トイレのメリットとは?

汲み取り式トイレは、古い仕組みと思われがちですが、実は今の暮らしにも合う多くの利点を備えています。
水洗トイレに比べて構造が単純な分、導入しやすく、環境や生活環境によっては非常に合理的な選択肢といえます。
たとえば、
- 下水道工事が不要で設置費用を抑えられる
- 水を使わないため水道代がかからない
- 配管が短くつまりが発生しにくい
- 下水道がない地域でも利用できる
- 断水や停電時など災害時にも使える
このように、汲み取り式トイレは生活の条件に左右されにくく、安定して使える点が魅力です。
ここからは、それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。
メリット➀:設置費用が安い
汲み取り式トイレは、下水道や浄化槽への接続工事が不要なため、設置費用を大幅に抑えられる点が大きなメリットです。
水洗トイレの場合、配管工事や浄化槽の設置、地面の掘削などが必要になりますが、汲み取り式であれば便槽を設置するだけで使用できるのがポイント。
特に、下水設備が整っていない地域や山間部の住宅では、初期コストを抑えつつトイレ環境を整えられる実用的な選択肢といえます。
簡易的な構造のため工期も短く、設置後すぐに使用を開始できる点も魅力です。
初期投資が少ない分、維持費やメンテナンスに余裕を回せるのも汲み取り式トイレの利点といえます。
メリット②:水道代がかからない
汲み取り式トイレは水を使わずに排泄物を処理するため、水道代がかからないという利点があります。
水洗トイレでは1回の使用ごとに数リットルの水を流すため、家族が多いほど水道料金がかさみやすくなりますが、汲み取り式であればその心配がありません。
水道料金の節約は、長期的に見ると大きな家計負担の軽減につながります。
特に井戸水や簡易水道を利用している地域では、水資源の節約という観点からも有効な仕組みといえます。
日々の使用で費用を抑えられる点は、汲み取り式トイレならではの実用的なメリットです。
メリット③:つまりが発生しにくい
汲み取り式トイレは排水経路が短く、配管の構造も単純なため、つまりが発生しにくいのが特徴です。
水洗トイレのように長い配管を通して下水へ流す仕組みではないため、異物が途中で引っかかるリスクが少なく、構造的にトラブルが起こりにくい設計になっています。
また、便槽がすぐ下にあることで排泄物の流れが明確に管理でき、詰まりの兆候にも気づきやすい点も利点です。
定期的に汲み取りを行い、紙類や異物を控えめにすれば、長期間安定して使い続けることができます。
メリット④:下水道がない地域でも設置できる
汲み取り式トイレの大きな利点は、下水道が整備されていない地域でも設置できる点にあります。
水洗トイレの場合、下水道や浄化槽への接続が必要になりますが、汲み取り式であれば便槽を設置するだけで使用が可能です。
山間部や離島、農村地帯など、下水道の整備が進みにくい地域でも導入しやすく、ライフラインに左右されにくいのが特徴です。
また、仮設住宅や一時的な居住環境にも対応できるため、幅広い用途に活用されています。
インフラ整備が難しい地域でも利用できる点は、汲み取り式トイレの大きな強みといえるでしょう。
メリット⑤:災害時にも使える
汲み取り式トイレは、水道や電気に依存しない構造のため、災害時でも使用できる点が大きな強みです。
地震や台風などで断水が発生した場合でも、便槽に直接排泄物をためる仕組みのため、通常どおり利用できます。
水洗トイレは停電や断水によって機能が止まることがありますが、汲み取り式トイレはその影響を受けにくく、非常時の生活を支える存在です。
また、仮設住宅や避難所での設置にも対応しやすく、被災地での生活環境を支える手段としても重宝されています。
ライフラインが途絶えても使えるという安心感は、汲み取り式トイレならではの大きなメリットです。
汲み取り式トイレのデメリットとは?

汲み取り式トイレには多くの利点がありますが、使い続けるうえで注意が必要な点もあります。
構造の特徴ゆえに、日常生活で不便を感じる場面が少なくありません。
主なデメリットは次のとおりです。
- 臭いが発生しやすい
- 衛生状態を保つのに手間がかかる
- 害虫が発生するおそれがある
- 定期的な汲み取り費用が必要になる
- 老朽化により便槽が破損する危険がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
デメリット➀:臭いが発生する
汲み取り式トイレの最大の悩みは、便槽から上がる臭いです。
水を流さずに排泄物をためる構造のため、時間が経つとガスが発生し、便器や床のすき間から臭いが上がってくることがあります。
特に夏場は気温が上がることで臭気が強まりやすく、室内にこもりやすいのが難点です。
臭いを軽減するには、定期的な汲み取りと換気が欠かせません。
便槽のふたや排気口の密閉がゆるんでいないかを確認し、必要に応じて業者に点検を依頼することも大切です。
消臭剤や送風ファンを併用することで、一定の改善は見込めますが、構造上、完全に臭いを防ぐのは難しいといえます。
デメリット②:不衛生になる可能性がある
汲み取り式トイレは、排泄物を便槽にためる構造上、どうしても衛生面の管理が難しくなります。
汲み取りの間隔が長くなると、便槽内でガスが発生しやすく、雑菌や害虫の繁殖につながってしまうからです。
特に夏場は温度が上がるため、悪臭や虫の発生リスクが高まります。
清掃を怠ると、便器まわりや床に飛び散った汚れが固着し、見た目にも不快な状態になりやすい点も課題です。
定期的な汲み取りと消毒、換気を徹底することで一定の衛生状態は保てますが、水洗トイレに比べると清潔さの維持には手間がかかります。
デメリット③:害虫がわく可能性がある
汲み取り式トイレでは、便槽内の汚物や湿気を好むハエやウジ、ゴキブリなどが発生することがあります。
特に夏場は気温が高く、ガスや臭気が虫を引き寄せやすいため、短期間で繁殖が進む場合も少なくありません。
一度虫が入り込むと、便槽内で卵を産み、成虫になって室内へ出てくることもあります。
害虫の発生を防ぐには、便槽のふたや排気管のすき間をしっかり密閉し、換気口には防虫ネットを取り付けることが効果的です。
定期的な汲み取りと清掃に加え、防虫剤や殺虫スプレーを併用することで、発生を最小限に抑えられます。
構造上の弱点ではありますが、こまめな管理によって十分に防止可能です。
デメリット④:汲み取り費用がかかってしまう
汲み取り式トイレは、定期的な汲み取り作業が必要なため、そのたびに費用が発生します。
自治体によって料金体系は異なりますが、一般的には1回あたり1,000円~2,000円前後が目安です。
使用人数が多い家庭では汲み取りの頻度も増えるため、年間を通してみるとそれなりの負担になることもあります。
また、悪臭や満杯を避けるために依頼時期を早めたり、夜間や休日の緊急対応を依頼したりすると、追加料金が発生する場合も。
水道代はかからない一方で、定期的な汲み取り費用が必要になる点は、維持コストとして理解しておくことが大切です。
デメリット⑤:便槽に落ちる危険性がある
汲み取り式トイレでは、便槽のすぐ上に便器が設置されているため、老朽化や破損によって落下事故が発生するおそれがあります。
特に古い木製やコンクリート製の便槽では、経年劣化でふたや周囲が脆くなり、体重を支えきれなくなることがあります。
過去には、人物が便槽内へ転落する事故も報告されています(※)
対策として、定期的に便槽や床の状態を点検し、ひび割れや腐食が見つかった場合は早急に補修を行うことが重要です。
古いトイレを長年使用している場合は、便槽ごと交換するか、簡易水洗トイレへの改修を検討すると安全性が高まります。
※参考:総務省消防庁
汲み取り式トイレを水洗トイレに変更するメリット

汲み取り式トイレを水洗タイプにリフォームすると、日常の使い勝手や衛生環境が大きく向上します。
初期費用はかかりますが、快適さと安全性の面で多くの利点があります。
主なメリットは次のとおりです。
- 衛生的で臭いが発生しにくい
- 子どもや高齢者でも使いやすい安全な構造
- 暖房便座やウォシュレットなどの機能を追加できる
- 長期的には維持コストの削減が期待できる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
メリット➀:衛生的に使い続けられる
水洗トイレに変更すると、排泄物がその都度水で流されるため、便槽にためる必要がなくなります。
汚物やガスが残りにくく、臭いや菌の繁殖を大幅に抑えられる点が大きな利点です。
汲み取り式では、定期的な清掃や消毒をしても臭いが戻りやすく、衛生管理に手間がかかります。
一方、水洗トイレなら排泄物が配管を通じて下水や浄化槽に流れるため、室内の空気を清潔に保ちやすくなります。
便器や床の汚れも軽減され、掃除の回数や負担が減る点もメリットです。
家族全員が安心して使える衛生的な環境を維持できるのは、水洗化の大きな魅力といえます。
メリット②:子どもや高齢者も安心して使える
水洗トイレに変更すると、段差が少なく、便座に腰かけて使えるため、子どもや高齢者でも安心して利用できます。
和式の汲み取り式トイレは、しゃがむ姿勢での使用が必要なうえ、バランスを崩して転倒する危険もありました。
水洗トイレでは立ち座りの動作が安定し、体への負担を軽減できます。
また、便座の高さや形状を選べるほか、手すりの設置や暖房便座の導入など、安全性と快適性を両立させる工夫も可能です。
動作のしやすさだけでなく、衛生面でも安心して使える空間へ変えられる点が、水洗化の大きなメリットといえるでしょう。
メリット③:暖房便座やウォシュレットなどの機能を付けられる
水洗トイレに変更すると、最新のトイレ設備を自由に導入できるようになります。
暖房便座やウォシュレット、脱臭機能、自動洗浄など、快適さを高める機能を追加できる点が大きな魅力です。
汲み取り式トイレでは構造上、電源や給水が制限されるため、こうした機能を取り付けるのは困難でした。
水洗トイレなら配管と電源を整えることで、多機能モデルを選択でき、季節を問わず快適に使用できます。
特に冬場の冷たい便座や、清潔を保ちたいという悩みも解消され、毎日のトイレ時間がより快適になります。
生活の質を高めるリフォーム効果が実感できるのも、水洗化の大きなメリットです。
メリット④:コストパフォーマンスがアップする可能性がある
水洗トイレへの変更は初期費用こそかかりますが、長期的に見るとコストパフォーマンスの向上が期待できます。
汲み取り式トイレでは、定期的な汲み取り費用や消臭・防虫対策などの維持費が継続的に必要です。
一方、水洗トイレでは汲み取りが不要になり、清掃やメンテナンスの手間も大幅に減ります。
さらに、節水型トイレを導入すれば、水道料金を抑えながら快適に使用でき、光熱費を含めたランニングコストの削減も可能です。
設備が新しくなることで故障リスクも下がり、修理や交換の負担も軽減されます。
一時的な出費を将来への投資と考えることで、水洗トイレへのリフォームは結果的に経済的な選択となるでしょう。
汲み取り式トイレを水洗トイレに変更するときの費用相場

水洗トイレへのリフォーム費用は、工事の方式や設置環境によって大きく変わります。
どのタイプを選ぶかによって、工事内容や予算の目安が異なる点を理解しておきましょう。
主な3つのタイプと費用相場は次のとおりです。
| 汲み取り式トイレの種類 | 費用相場 | 特徴 |
|---|---|---|
| 簡易水洗トイレ | 30万〜60万円前後 | 便槽を再利用して工事費を抑えられる |
| 下水道直結型水洗トイレ | 60万〜100万円前後 | 便槽撤去と下水接続が必要 |
| 浄化槽設置型水洗トイレ | 100万〜180万円前後 | 下水道がない地域向け |
それぞれ詳しく見ていきましょう。
簡易水洗トイレへ変更するときの費用相場
汲み取り式トイレから簡易水洗トイレへ変更する場合、費用の目安は30万〜60万円程度です。
既存の便槽をそのまま利用し、便器と配管のみを交換するため、工事期間や費用を比較的抑えられます。
簡易水洗トイレは、少量の水で排泄物を便槽へ流す仕組みで、従来よりも臭いや虫の発生を軽減できるのが特徴です。
水洗トイレと同じような見た目と使用感を得られるため、完全な下水接続が難しい地域でも快適な環境を実現できます。
ただし、便槽の容量や状態によっては改修工事が必要になる場合もあります。
導入を検討する際は、現地調査を行い、最適な設置方法と費用を業者に確認しておくことが重要です。
下水道直結型水洗トイレへ変更するときの費用相場
汲み取り式トイレから下水道直結型の水洗トイレへ変更する場合、費用は60万〜100万円前後が目安となります。
便槽を撤去し、新たに下水道管へ配管を接続する工事が必要なため、簡易水洗トイレよりも費用が高くなります。
工事内容には、便器や給排水管の交換に加えて、床や壁の一部改修が含まれるケースもあります。
その分、汲み取り作業が不要になり、長期的な維持コストを大幅に削減できるのが大きなメリットです。
また、自治体によっては下水道接続工事に補助金が出る場合もあります。
工事を検討する際は、費用見積りとあわせて、補助制度の有無を確認しておくと安心です。
浄化槽設置型水洗トイレへ変更するときの費用相場
下水道が整備されていない地域で水洗トイレを導入する場合は、浄化槽を設置して排水を処理する方法が一般的です。
この場合の費用相場は100万〜180万円程度。
浄化槽本体の設置に加え、配管工事や地面の掘削、便槽の撤去費などが発生します。
浄化槽は、家庭から出る生活排水を微生物の働きで浄化し、きれいな水として放流する装置です。
維持には定期的な清掃や保守点検が必要ですが、環境に配慮しながら水洗トイレを利用できる点が大きな利点です。
補助金制度を活用できる自治体も多いため、設置を検討する際は、申請条件や補助金額を事前に確認しておくとよいでしょう。
汲み取り式トイレのリフォーム代に補助金は使える?

汲み取り式トイレを水洗トイレへリフォームする際、自治体の補助金制度を利用できる場合があります。
補助の目的は、衛生環境の改善や下水道の普及を促進することにあり、申請条件を満たせば工事費の一部を負担してもらえる仕組みです。
多くの自治体では、次のようなケースで補助が適用されます。
- 下水道の供用開始区域で、汲み取り式から水洗トイレへ変更する場合
- 下水道が整備されていない地域で、浄化槽を新設する場合
- 環境衛生の向上を目的とした改修工事を行う場合
補助金額は地域によって異なりますが、数万円〜数十万円程度が一般的です。
申請には「工事前の事前申請」が必要なことが多く、工事後の申請では対象外となるケースもあります。
まずは、お住まいの自治体ホームページや水道局に問い合わせ、補助制度の有無と申請方法を確認することが大切です。
条件を正しく理解し、手続きを進めることで、費用負担を抑えながら安心してリフォームを行えます。
参考:川崎市上下水道局「助成・融資制度について」
汲み取り式トイレから水洗トイレにリフォームするときの業者の選び方

水洗トイレへのリフォームは、費用だけでなく安全性と施工品質が重要です。
特に排水工事を伴う工事では、自治体の基準を満たした適正な施工が求められます。
信頼できる業者を選ぶポイントは次の3つです。
- 工事地の自治体で指定を受けた「水道局指定工事店」であること
- 事前に現地調査を行い、詳細な見積りを提示してくれること
- PL保険などの損害補償保険に加入していること
これらを確認しておくことで、工事後のトラブルを防ぎ、安心してリフォームを進められます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
選び方➀:自治体の【水道局指定工事店】の業者を選ぶ
汲み取り式トイレを水洗トイレに変更する際は、工事を行う地域の自治体で正式に指定を受けた業者へ依頼することが原則です。
水道局や下水道課による指定工事店制度は、全国共通ではなく自治体ごとに登録・許可が分かれています。
たとえば川崎市であれば「川崎市指定工事店」として登録された業者のみが、市内で配管工事やトイレ改修を行えます。
他県や他市の指定業者が施工した場合、申請が通らなかったり、工事後の検査に合格できなかったりするケースも。
自治体によって排水設備の基準や手続きの流れが異なるため、登録のない業者では不適合となる可能性が高いのです。
安全で確実な施工のためにも、依頼前に自治体のホームページや水道局窓口で、業者が正式な指定を受けているかを必ず確認しましょう。
選び方②:作業前に見積りを作ってもらえる
汲み取り式トイレから水洗トイレへのリフォームは、工事の内容や範囲によって費用が大きく変わります。
そのため、事前に現地調査を行い、詳細な見積書を提示してくれる業者を選ぶことが重要です。
見積りを省略したまま契約を急がせる業者や、「現場を見なくてもだいたい〇万円です」と口頭で答える業者には注意が必要です。
便槽の位置や配管の深さ、地盤の状態などによって工事手順は異なり、見積りを正確に出すには必ず現地確認が欠かせません。
費用だけでなく、作業説明の丁寧さや質問への対応力も、良心的な業者を見極める大切なポイントです。
選び方③:PL保険に加入している
水洗トイレへのリフォームを安心して任せるためには、PL保険(生産物賠償責任保険)に加入している業者を選ぶことが大切です。
この保険は、工事後に発生した漏水や機器の不具合など、施工に起因する損害を補償するためのものです。
たとえば、配管の接続不良によって床下が水浸しになった場合や、取り付けた便器が破損して家具や家電に被害を与えた場合でも、PL保険に加入していれば補償を受けられます。
万が一のトラブルに備えて、保険加入の有無を事前に確認しておくことで、工事後のリスクを最小限に抑えられます。
信頼できる業者ほど、PL保険や損害賠償保険など複数の補償制度に加入しており、契約前にその内容を丁寧に説明してくれるものです。
汲み取り式トイレのメンテナンス方法

汲み取り式トイレを清潔に保つには、日常的な掃除・定期的な汲み取り・点検を意識することが大切です。
難しい作業はありませんが、少しの手入れで臭いや虫の発生を大きく減らせます。
| メンテナンス内容 | 頻度の目安 | 注意点 |
|---|---|---|
| 掃除・消臭 | 毎日〜週数回 | 中性洗剤を使用。強い薬剤は便槽のバクテリアを弱らせるため避ける |
| 換気 | 使用のたびに | 湿気をためず、臭いや虫の発生を防ぐ |
| 便槽・排気口の点検 | 月1回 | ふたやパッキンのひび割れ・緩みを確認 |
| 汲み取り依頼 | 2〜3か月に1回 | 満杯前の依頼が理想。臭いが強い場合は清掃も併せて依頼 |
異臭や水の流れの悪化を感じたら、無理に流さず専門業者への相談が最善です。
定期的な管理を行うことで、衛生的で快適な状態を長く維持できます。
汲み取り式トイレに関するよくある質問

最後に、くみ取り式トイレに関するよくある質問をまとめました。
参考にしてみてください。
汲み取り式トイレの汲み取り頻度はどのくらい?
汲み取りの目安は、2〜3か月に1回程度が一般的です。
ただし、使用人数や便槽の容量によって適切な間隔は異なります。
たとえば、家族が多い世帯や来客が多い家庭では、1か月〜1.5か月で満杯になることもあります。
逆に、一人暮らしや使用頻度の少ない住宅では、3か月以上空けても問題ない場合も。
臭いが強くなったり、水の流れが悪くなったりしたときは、便槽がいっぱいになっているサインです。
満杯まで放置すると悪臭や害虫の発生、ひび割れの原因になるため、早めに汲み取りを依頼しましょう。
汲み取り式トイレの臭い対策は?
汲み取り式トイレの臭いを抑えるには、換気・清掃・便槽管理の3つを意識することが大切です。
- 使用後は換気扇を回すか窓を開けて湿気を逃がす
- 便器や床まわりを中性洗剤でこまめに清掃する
- 漂白剤や酸性洗剤は使わない
- 便槽のふたや排気管のゆるみ・ひび割れを定期的に点検する
- 防臭パッキンやグリスの劣化を確認する
- 消臭剤や送風ファンを併用する
湿気をためず、定期的に掃除と点検を行うことで臭いの発生を大きく防げます
それでも改善しない場合は、便槽の清掃や点検を専門業者に依頼しましょう。
汲み取り式トイレから水洗トイレに変えるときの注意点は?
汲み取り式トイレを水洗トイレに変更する際は、工事条件と手続きの確認が欠かせません。
まず、配管工事を行う場合は、工事地の自治体で指定を受けた「水道局指定工事店」への依頼が必須です。
他地域の指定業者では申請が通らないこともあるため、注意が必要です。
また、工事にあたっては下水道への接続許可や浄化槽の設置申請が必要になる場合があります。
着工前に自治体へ相談し、必要書類をそろえておくとスムーズです。
さらに、建物の築年数や配管位置によっては追加工事費が発生することもあります。
トラブルを防ぐため、事前の現地調査と見積り内容の確認を徹底しましょう。
まとめ|汲み取り式トイレの特徴とリフォームのポイント

汲み取り式トイレは、下水道が整っていない地域でも使用できる便利な設備ですが、臭いや汲み取り作業の手間など、維持に工夫が必要です。
長く快適に使うためには、次の点を意識しましょう。
- 定期的な汲み取り(2〜3か月に1回)と清掃を欠かさない
- 換気や便槽の点検を行い、臭いや虫の発生を防ぐ
- 詰まりや異臭が強い場合は、無理に流さず業者へ相談
- 水洗化を検討する場合は、指定工事店に依頼し、補助金の有無を確認
汲み取り式トイレは、正しい管理と早めの対応で快適さを保てます。
「水洗トイレにしたい」「臭いや詰まりが気になる」などのお悩みがある方は、
富士水道センターまでお気軽にご相談ください。
記事の監修者

島尻 博富士水道センター
水道工事や各種水回りの修理に従事して35年間。大規模修繕工事の計画~実施までの対応も可能。保有国家資格(給水装置工事主任技術者、一級管工事施工管理技士、一級建築配管技能士)。2023年1月25日放送 テレ朝スーパーJチャンネルで強烈寒波の報道に出演。






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